そこにあるのはツナ缶だ。

おつなとサバ夫のだらっとした日々。

好きに読ませておくんなさい。

とうとう我慢できなくなり、地元の本屋さんへ赴く。
10分!10分滞在で!と自分に言い聞かせながら入り口で手を消毒。念入りに念入りに。
情けは人の為ならずの消毒版。みんな元気でいたいもんね。

面陳いいね!素敵だね!特集棚素敵だね!文房具も新作素敵だね!
マスクしててもわかる気がする本屋さんの香り、あー落ち着く。

ネット本屋さんにもたーくさんお世話になっているけど、本そのものを眺めまわしたい欲求があるのさ。
お目当て本の隣や近くに並んでいる本にも目がいくでしょ、ネットの本屋さんでも「あわせて買いたい」とか
「この本を買った人はこんな本にも興味があります」とかいっぱい出ますけれど(そして参考にもなるけれど)
やーっぱりちょっと性質が違う。なんででしょうね。不思議。
さーて、どーれにしようかなー


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大昔の彼氏に
「君のしている読書は思考を停止させるもので役に立たない無駄な行為だ」(要約)てなこと言い放たれたことがある。
選書から何からダメ出しされた懐かしいおもひで。
あの頃一緒に本屋に行くのは苦痛以外のなにものでもなかった。それなのについて行っていた私も大概バカだが。
時間とお金を費やすのならば、そこから何かを得て世に還元する、そうじゃなければ人として世の中への責任を果たしたことにならない、と、いうようなこともよく言っていたけど
そんなふうに考えているのね、窮屈そうであるな、生きていくのが大変そうだな、と、ぼーっと考えてた。

だってねえ、それのみが是とされちゃうと、いろいろ楽しむことのハードルが変に高くなっちゃう気がしたんだけどね。
本も音楽も何もかも。わかりあえなかったなー。「君は世の中に対して無責任だ」ってのもよく言われたな。
楽しい、面白い、じゃ何がいけないんだろ。思考を止めているつもりはないんだが。
役に立つことがなけりゃ読んじゃだめなのかしら。そしてそれを世の中に還元する?そんな偉そうなことできないよ。
これこれこういうことを得たわ!と明らかにできなくたって、なにかしら自分の中に残れば充分でないかね。
音楽と同じで……アナリーゼ大事だけどそれだけじゃないでしょ……
単に「心地よい音の流れだなあ、私これ好き」じゃ、だめかな。

ただ、いろいろなものがつくられた背景や理由を知ると一層楽しい時もある。
だから掘り下げたり分析したりを否定しているわけじゃないのですよ。
手をのばす範囲なんて、いつのまにか自然に広げていきたくなるもんよ!へーきへーき!
だからあれダメそれダメこれ読め、と無理強いしないでね!ってことをお願いしたかっただけなんだ。
それに感じかたなんて人それぞれなんだから合う合わないだってあるでしょ。強制は嫌だなあ。

あの時の私はたったこれだけのことすら言えなかった。意気地なしだ。

本屋のあとでいつも寄っていた喫茶店、近況報告の後は決まってお説教で
あの日はごつごつごつごつ本の背表紙の角をテーブルにぶつけながら
「本来、これは高校生の時に必ず読むべきだった本だし、わかって欲しいから贈ったんだけどさ、
いつになっても感想言ってこないよね。なんで?」てな感じのこと言ってた。

なんでと言われましても…読んでみたけれどなんと言えばいいのか、
そういうこと言いながらその本押しつけてきたってとこでなんというか
うっすらと「??あれれ?」と思ったからホントなんて言っていいかわからなかっただけなんだけど
あー、そんなごつごつしたら本が傷む、可哀想だ(物質としても本を愛する派)、
本を乱暴に扱う人、やだな。こういうの嫌いだなあ…

と、ぐるんぐるんしたあげく、結局最後のとこの「嫌いだなあ…」しか言語化できず
嫌いと言ったとたんにごつごつが激しくなって、ごつごつされてる本と自分が重なって、

なんか、パッカーン!と気がついた。

あ、私、乱暴な扱い受けてんだ。嫌いだったんだこういうとこ。って。
脳天ひらいた気がしたね。エウレーカ!ってきっとあんなふう。


わかった、勉強するわあなたのために。とか嘘八百並べ立ててやりすごしながら日に日に距離をとって
最終的には
「ごめんなさい、あなたの隣には、私、いられない。
彼女としてふさわしくないって電話もきてるの(ここは本当)
もう疲れてしまったの、バカだから。もっとふさわしい人と一緒にいてあげてねヨヨヨヨ」
というような方向に持って行ってお別れすることに成功した。
けどしばらくつきまとわれて弟にまで迷惑かけた。すまん弟。


「高校生が必ず読むべき本」かあ?エーリッヒ・フロムの『愛するということ』。
今以てそうは思えないんだが。自発的に手にとるならまだわからんでもないけど、押しつけるもんじゃないでしょ。
かの人はこの本にいたく感銘を受けたようだったが、それならなおさら
「どうしてわかってくれないんだ?」とか言いながら掴んだり揺さぶったり小突いたりしてくるのはおかしいと思う。

違うかたちで接したかった本だった。


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本屋さんで目にとまったものを気軽に手にとることができるって嬉しい。
同行者の目を気にしないで選べるって素敵。


押しつけは嫌だけど、おすすめというか、こんなものもあるよーって紹介を読むのは好き。
いろいろな本を教えてくれるブログとか本屋さんのポップとか!
本に挟まっている新刊案内も巻末のリストも楽しい。
どれをとっても嫌な気持ちがしないのはなんでだろ。
やっぱり無理強いが苦手なんだな。自由万歳。


今はちょっと行動の自由のほうが制限されちゃっているけど
わがままがまがま、思うぞんぶん棚の間を徘徊できるようになる日を待つことにしようと思う。
カゴだーカゴ持ってウロウロするぞー!ウヒョー!


それではまた。


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